荒涼たる景色
ラスベガスという単語から連想されるのは、ひたすらカジノです。夜、ギンギンに輝く色とりどりのホテルが立ち並び、中ではスロットマシンがガチャガチャ、ルーレットがコロコロ、そしてポーカーフェイスでポーカーに興じると、そういうイメージしかわいてきません。
しかし、そうした面を取り除いてみても、なおもこの地域には旅する意味が残ります。
このネバダ州、アリゾナ州、ユタ州にかけて広がる砂漠。ここに点在する国立公園の数々には、まさに奇観としか言いようがない景色が広がっているのです。
巨大な人造湖であるパウエル湖を中心として、半径230キロの円の中に、いくつもの国立公園が含まれています。これをグランドサークルと呼んでいるのです。
このグランドサークルの中には、あの有名なグランドキャニオンも含まれます。

ラスベガスは、このグランドサークルツアーの起点となる都市なのです。
また、ラスベガスとその周辺都市から外れた位置には、サンタフェ、エルパソの両都市がありますが、これらは何れも個性ある街並みをしています。かたやプエブロインディアン風、かたやメキシコ風と、それぞれに見所があります。かつ、グランドサークルから外れた場所にありながら、魅力的な公園が二つも存在します。
ロッキー山脈の西から海岸までの間の山岳砂漠地帯は、公園巡りのベストスポットなのです。但し、その気温の高さは全米最悪です。観光時期は春と秋がベストです。夏は避けましょう。
なお、アメリカの観光地を網羅したリストはこちらです。
ラスベガスの観光
ラスベガスの観光ですが……はい、カジノです。おしまい。

ホテルはどこも個性を打ち出そうとしていて、それはもうゴージャスにできています。カジノを併設しない「ノンゲーミングホテル」もありますが、そうでないところも多いです。
そもそもネバダ州とは、そういうところです。砂漠のド真ん中にあって他に産業がないので、なんでもアリなのです。賭博もオーケー、売春もオーケー。あと、そこに後付けで遊園地みたいなモノをくっつける、と。
例えば、ストラトスフィアタワーみたいに、高度260メートルから落下する、フリーフォールのエンターテイメントがあったり。アドベンチャードームみたいな屋内遊園地があったり。
地元でのスポーツ観戦も、一種類だけ提供されています。なんと、西部の砂漠のド真ん中にアイスホッケーチームです。その名も「ベガス・ゴールデンナイツ」……まんまです。

このギラギラ感。自重する気ゼロです。
ラスベガスに滞在し続けるということは、つまり……ゴージャスなホテルに泊まり、昼間は遊んで気晴らしをして、夜は大金を賭けて、勝ったら酒を飲んで女の子をお金で買う、という俗悪な楽しみに耽る、ということを意味するのです(偏見)。

が、そんなギャンブラー達の気晴らしの一つに、グランドサークルの観光も含まれます。
健全なる観光客な私達が目指すのは、きっとこちらです。
それでは、グランドサークルに含まれる公園から紹介していきましょう。
グランドサークル
ラスベガスから時計回りに見ていくと、こんな順番になります。
- ザイオン国立公園(緑がある)
- ブライスキャニオン国立公園(雨で削れた岩場)
- キャピトルリーフ国立公園(先住民の岩絵)
- アーチーズ国立公園(昔の氷河に削られた岩がアーチに)
- メサベルデ国立公園(崖の下に先住民の住居跡)
- 化石の森国立公園(樹木などの化石が転がる)
- モニュメントバレー(氷河に削られて平坦になったところ、切り立った岩)
- アンテロープキャニオン(アンテロープの角みたいに曲線にえぐられた岩場)
- セドナ(川も流れるパワースポット)
- グランドキャニオン(有名な大峡谷)
これで全部ではありませんが、だいたいこんな感じです。赤字が岩場で、緑字が、植物もまぁある感じです。グランドキャニオンも、草木一本生えていないわけではないですが、見所はやはりダイナミックな地形なので、赤としました。
さて、見所が多いのはわかりましたが、問題はどうやって見てまわるかです。
一番シンプルなやり方としては、レンタカーを予約して、国立公園のロッジも自分で予約して、勝手に見てまわるというものです。多分、上手にやれれば一番楽しい旅行になると思います。但し、時間と予算と体力に制限がなければ、という前提がつきますが。
現実には、いかな奇観とはいえ、ずーっと変なモノばっかり見ていると飽きますし、驚きもなくなります。だから、ある程度のところは端折って、ポイントを絞って見物するのがいいかと思います。
そうした目的から考えて便利なのが、ツアーです。
日本を出発する前から、日本の代理店を通すか、現地の業者に連絡するなどして、日程を組んでもらいます。一日でグランドサークルをまわりきるなんて絶対に不可能なので、国立公園に宿を手配する必要もあります。どこに泊まってどこに行くかを、全部やってもらうのです。ついでに車の運転も任せれば、緊張しながら交通事故を警戒する負担もなくなります。
また、日程が限られていて、グランドサークルを全部まわる意欲もない、という場合には、メジャーな場所だけピンポイントで攻めることもできます。

最もメジャーなグランドキャニオンに行く方法は、やはりいくつも用意されています。
一番近い場所としてはフラッグスタッフとなるので、ここからのアクセスが楽です。アリゾナシャトルのバスが1日3便ほど、アムトラック(鉄道)のフラッグスタッフ駅から出発して、フラッグスタッフ空港に寄りながら、グランドキャニオンに向かいます。
もちろん、ラスベガスからの直行もあります。これがなんともベガスっぽいのですが、なんと小型機です。シーニック航空が、グランドキャニオンの上を遊覧飛行しつつ、プランによっては地上に下ろしてくれもしたり、コロラド川をボートで下ったりするツアーを提供してくれています。少々高くつきますが、サクッと見てまわれる上に、上空からの眺めがついてくるので、これもなかなかよさそうです。個人的には、上空から写真を撮ろうとしてスマホを落としそうで怖いんですけどね。想像しただけで手汗が止まりません。
少々子供騙しといえなくもないですが、ウィリアムズからは、なんと蒸気機関車でグランドキャニオンに向かう便もあるそうです。もちろん、ラスベガスやフラッグスタッフでレンタカーを借りるというのも、一般的な方法です。

モニュメントバレーも有名な場所です。ところどころにニョッキリと、木の切り株みたいな大きな岩場が残る一方で、あとはひたすら荒野が続く場所です。こうした地形ができた背景としてはやはり、過去に氷河の移動があったからだと思うのですが、なかなか他にはない景観です。
レンタカーがあればフラッグスタッフから直行すればいいのですが、ない場合はやはり、ラスベガスからのツアーが便利です。また、現地についてからは、借りた車で移動するのも難しくなります。舗装もされていない荒れた岩場なので、どちらにせよ現地のツアーに参加するしかなくなります。

セドナもまた、ツアーに向いています。
ネイティブ・アメリカンにとっての聖地だったこともあり、ここでは景観と文化がセットで提供されているのです。かつての儀式の再現を目の当たりにしたり、場所の意味の説明を聞いたりできるので、ただ歩くだけではもったいないです。
一応、自力で行く場合には、フェニックスかフラッグスタッフからになります。
なお、お得にセドナを旅したければ、セドナ商工会議所公式ウェブサイトに、割引クーポンを発行しているところがあるので、見てみてください。
ルートから外れた場所
ラスベガスとグランドサークルから外れた場所、アリゾナ州の南部から南東方向にかけて、いくつかの街と公園が存在します。小粒ながらも、なかなか魅力的なところが揃っているので、可能なら立ち寄りたいところです。
まずはツーソンで、こちらは列車でならロスアンゼルス、バスでならラスベガスやフラッグスタッフなどからアクセスできる場所です。
一言でいって西部劇の世界です。オールドツーソンには、いかにもな景色が残されています。

このオールドツーソンでは、観光客向けのガンファイトショーまでやっています。
あとは、アリゾナ・ソノラ砂漠博物館や、ピマ航空宇宙博物館などが有名です。

ツーソンから更に南東に向かうと、エルパソに出られます。
エルパソの魅力は、なんといってもメキシコっぽさですが、郊外にある二つの公園が見逃せません。カールスバッド洞穴群国立公園、ホワイトサンズ国定公園。わざわざここまで来たのなら、見ないで済ませるのはもったいないです。

もう一つ、アクセスがよくないのですが、サンタフェも魅力的な街です。
アメリカ建国に先立つ1607年に建設された街ということですから、現存するアメリカ国内の都市としては、最古の一つです。そのおかげもあって、当時からこの地に居を構えるプエブロ・インディアン様式の建築物が残っています。これらはアドビ(日干し煉瓦)で作られているのです、が……中にはニセモノも混じっているようです。普通に鉄筋コンクリートで作って、見た目だけプエブロっぽくしたものもあるらしいとか。
街並みも独特で、食文化も固有のものがあります。

しかも近郊にはタオスプエブロという世界遺産まであります。またチマヨは織物で有名です。

逆に、ラスベガスからロスアンゼルス方面に向かうと、あのデスバレーがあります。
全米でもっとも暑い、まさに死の谷です。行く時には是非ともツアーにしましょう。こんな場所に一人でレンタカーで行って、助けが得られなかったら、本当に死んでしまいます!
他の場所でも、とにかく脱水症状・熱中症だけは注意です。

これらの都市や見所に立ち寄るには手間がかかりますが、その分の楽しみは期待できると思います。
日程がなんとかなりそうなら、是非行ってみたいですね。