アメリカ中西部の観光まとめ

アメリカ合衆国
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シカゴを中心とした都市部……とその隙間

 アメリカ中西部という言葉は、少しわかりにくい感じがします。合衆国を東西に切り分けた東半分を、更に南北で真っ二つ。残った北東方向の陸地のうちの西側が、それに該当するのです。具体的には、五大湖の真ん中から西側、というイメージでしょうか。
 アメリカ第三の大都市であるシカゴ、アムトラックのあらゆる路線が集中するこの交通の要衝を中心に、ミネアポリスやデトロイトといった人口の多い都市がいくつも点在しています

 なので、西部や大平原とは様子がガラッと変わって、ここではナイアガラの滝を除くと、特に自然の美を鑑賞する場所は、あまりありません。
 ここで追求するべきは、ひたすら人工的な楽しみです。例えば、クリーブランドやセントルイスには、歴史ある交響楽団が存在しています。シカゴで見物するべきは摩天楼の数々ですし、インディアナポリスではモータースポーツの祭典が開かれます。
 また、大都市が多いので、スポーツ観戦にも向いています。四大スポーツのいずれかのチームの拠点が、だいたい大きな都市には一つくらいはあるものです。

 その意味では、好みに合わない人もいるかもしれません。
 そもそも旅行の楽しみとはなんでしょうか? 美食や快適な環境も結構ですが、自宅にいては味わえない、その土地ならではの尖った個性が好奇心を刺激する……そういうものではないでしょうか? だとすれば、きれいに構築されつくした大都会というものは、所詮どこでも代わり映えなどしないものではないでしょうか?
 しかし、隙間を探せば、やはり「その土地らしさ」が滲み出ている街もあります。ドイツ人移民の街もあれば、アフリカン文化の強い街もあります。そういった違いを敏感に嗅ぎ分けて、その都市ならではの雰囲気を味わうのも、この地域を旅する楽しみなのでしょう。

 なお、アメリカの観光地を網羅したリストはこちらです。

中西部の都市

 さて、この地域を訪れる人は、スポーツ含め、文化的な何かに焦点を当てているはずです。その意味では、リンク先の全体のまとめだけ見ても大雑把過ぎて参考にならないかもしれません。
 そこでここでは各都市で提供されるエンターテイメントを表形式でより詳細にお伝えします。

 野……野球
 フ……アメリカンフットボール
 バ……バスケットボール
 ア……アイスホッケー
 サ……サッカー
 オ……オーケストラ、オペラ
 ラ……ライブハウス
 補……地元でどんな音楽が好まれているか、またはイベントなど

都市名
一言
シカゴ ブルース、ジャズ
摩天楼と美術館と博物館、名物はディープディッシュピザ
ミルウォーキー × × × × × 夏のサマーフェス
ドイツ風の街、名物はチーズとビール、ハーレー博物館など
ミネアポリス ジャズ
ボブ・ディランとプリンスの街、美術館と博物館多数
カンザスシティ × × × ジャズ
アフリカンアメリカンの文化の街、名物はバーベキュー
セントルイス × × × ブルース
バーベキューとコンクリートシェイク、ビールも
インディアナポリス × × × ×
モータースポーツの街
シンシナティ × × × プロのバレエ団も
チリソースにゲッタ(ソーセージ)、ドイツの街並みも
デトロイト × × ヒップホップ、テクノ
ブラックミュージックと自動車の街
クリーブランド × × ロック他
ロックが生まれた町、トレモントでエスニック料理を
ピッツバーグ × × クラシック他
インクラインとリバークルーズで景観を楽しむ

 このように細かく追っていくと、街ごとにちゃんと個性があるのがわかります。
 上のまとめだけでは書ききれなかったことを追記していくと……

 シカゴの建築物が必見なのは、19世紀末から大きく建て直されたからです。1871年の大火によって、市内の広い範囲が焼失しました。その後に建造された建物でも、特に代表的なのがルッカリーでしょう。

ルッカリーは再建後のシカゴを代表する建築物

 一方、大火以前からの建築物もあります。それがウォータータワーで、こちらはミシガン湖から水を供給するための建造物だったおかげで、焼けずに済みました。他にも、マリーナシティやトリビューンタワーなど、見所がいっぱいです。

大火を生き延びた給水塔

 これらのシカゴの建造物を見るには、自分で歩いて見て回ってもいいのですが、シカゴ建築財団が観光用のツアーを催行しており、中にはミシガン湖のクルージングを伴うもの、日本語のオーディオガイドがつくものなどもあります。

ミネアポリス近郊のスティルウォーター

 ミネアポリスは、対岸のセントポールとあわせてツインシティズと呼ばれますが、なんというか、本当に「都会」です。見所がモール・オブ・アメリカになってしまうくらいに都会です。ショッピングと水族館とアトラクションという……ここでなくてもいいのでは、と思わせてしまう何かを感じてしまいます。
 しかし、日本と違って大都市といっても、すぐ郊外に出られます。スティルウォーターという町があり、ここはミネソタ州で最初に入植者が立ち入った場所としても知られています。峡谷の美しさと街並みの古さを楽しみつつ、ワイナリーを訪問し、クルーズ船に乗ることもできます。
 また、ミネアポリス市内でもミシシッピ川クルーズを楽しむことができますし、五大湖の一つスペリオール湖に面したダルースへの小旅行も人気です。
 都市そのものより、周辺の小さな町を訪れると、もっと楽しく過ごせるでしょう。

インディアナポリスといえばモーターレース

 インディアナポリスは「インディ500モーターレース」の開催地で、これは毎年5月に行われています。
 またミルウォーキーでは、6月末頃から音楽の祭典である「サマーフェス」が開催されますが、その後もイベントは続きます。ドイツ、アイリッシュ、イタリアンと民族ごとのお祭りが繰り広げられ、最後にはネイティブ・アメリカンの集会まで行われます。そのため、夏にミルウォーキーを訪れる場合には、事前にホテルを予約しておく必要があるでしょう。

ピッツバーグ名物、インクライン

 中西部という地域は、最初に植民者が集中した東部とは違って、後から流れ着いたドイツ系移民が多数を占めた地域でした。また、ドイツ化したスラヴ系住民も多かったのです。ですが、工業化と共に大勢の黒人が流れ着き、デトロイトなどの工業地帯で働きました。だから黒人文化の色濃い都市もあるのです。
 街それぞれに文化が残る一方で、人種差別も薄れてきている場所です。ある意味、アメリカらしい地域なのでしょう。

ナイアガラ・フォールズ

 さて、ナイアガラの滝といえば有名です。
 世界三大瀑布の一つがこれで、今でも大勢の観光客を集めています。

キレイですねー

 ……と、それだけで済めばいいのですが、ここはちょっと面倒な事情があるのです。

 それは国境です。
 ナイアガラ・フォールズはアメリカ・カナダの国境に位置しているため、あらゆる角度から好きなように滝を鑑賞したいと思ったなら、国境越えが欠かせなくなります。
 どちらかというと、カナダ側のほうが恵まれていて、正面から滝を見られる他、宿泊施設などもカナダ側に集中しているという状況です。とりわけ、スカイロンタワーに上ると、ナイアガラの全貌を見下ろすことができます。

 よって国境越えの準備をしておく必要があります。
 アメリカからカナダに入る場合、特にチェックはありません。カナダの入国に際しては通常、eTAが必要なのですが、それも不要です。イミグレーションオフィスの扉を出てレインボーブリッジの歩道を進み、カナダ側のゲートを越えます。手数料が50セントかかりますが、アメリカドルでもカナダドルでもいいようです。パスポートを見せてスタンプを押してもらいましょう。但し、車で通行する場合には、3.75ドルかかります。
 カナダから戻ってくる場合には、カナダに行った理由や滞在時間などを確認されます。また、車で行き来する場合には手続きに時間がかかる傾向があるようです。
 もし、先にカナダに入国していて、それからアメリカにはじめて入国するという場合には、普通に入出国カードに記入し、6ドルの手数料を支払うなど、入国手続きが必要になります。ただ、ESTAはなくても大丈夫なようです。
 よって必要なものはパスポート、通行料金、自動車に乗っている場合には国際運転免許証も必要です。
 特に夏のシーズン中には混雑が起きやすいので、時間の余裕はみておきましょう。

カナダ側の街、クリフトンヒル

 カナダ側には宿泊施設などがあるので、ではカナダドルが必要になるのでは、と心配になるかと思いますが、心配は要りません。カナダ側には、なんとカジノまであるので、そこで両替もできてしまいます。
 クリフトンヒルという繁華街が作られていて、そこには観覧車からナイトクラブまで、なんでも揃っています。

 あと、ナイアガラ観光は濡れます。
 霧の乙女号という観光船があって、滝壷の直前に接近するのですが、当然水は飛び散るので、みんなびしょ濡れになります。レインコートは配布しているようですが、そんなのあっても容赦なく濡れます
 着替えも用意しておいたほうがいいかもしれません。あと、荷物の中も濡れないように保護するとか、ビニール袋で守るなどの工夫が欲しいところです。

ゴート島

 アメリカ側でもっとも美しい眺望を望むなら、ゴート島に行くのもいいでしょう。
 小さな島ですが、滝を間近に見られる絶好のポイントです。

移動の手間をどうするか

 最後に、この地域をどう旅するかをよく考える必要があります。
 シカゴを中心に、鉄道網もよく整備されているので、移動に苦労することはありません。しかし、問題はその「時間」です。
 基本的に、どこに行くにも数時間単位なのです。

 例えば、シカゴからミルウォーキーまででも2時間近く。これが一番近い場所です。
 ミネアポリスまで行くとなると、普通に列車で8時間です。また、シカゴからクリーブランドも7時間。他もそんな感じで、5,6時間はかかるのが当たり前になっています。

 要するに、寝台車を使って一気に遠くに行くとか、飛行機も織り交ぜるとか、うまく日程を組み合わせないと、一日が移動だけで潰れてしまうことも考えられるのです。
 見る場所を絞り込むか、移動方法をよく検討するか、何か工夫するべきです。上記の表を見て、何に触れたいのかをよく考えてみてください。

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