現代世界の中心
アメリカ合衆国にとって、もっとも歴史ある地域が東部です。
ワシントンDCから北東方向にまっすぐ、フィラデルフィア、ニューヨーク、ボストンと、東海岸を代表する大都市が続きます。これらの都市は現在でも政治・経済の中心をなしており、まさにアメリカの、いや世界の中枢といってもいいでしょう。
一方で、そうした市街地からちょっと離れたところには、一風変わった街が点在しています。今なお昔ながらの暮らしを守るアーミッシュが暮らすランカスター、野球の殿堂があるクーパーズタウン、東海岸のカジノがあるアトランティックシティ……
そして、この地域の北東端には、メイン州があります。アーカディア国立公園を中心に、大自然の景観を楽しめるスポットもあるのです。
なお、何かと時間のかかるアメリカ旅行ですが、東海岸は比較的、移動時間を短く済ませることが可能です。
アムトラックを使った場合、ワシントンDCからフィラデルフィアまでたったの2時間、フィラデルフィアからニューヨークまで1時間半、ニューヨークからボストンだけは4時間かかりますが、他の地域の移動時間を考えたら、なんとも短い限りです。
うまく飛行機を組み合わせれば……例えばニューヨークから入ってワシントンDCまで南下してから、ボストンに飛行機で飛ぶなど……この地域の観光は、思った以上にコンパクトにできそうです。
また、旅行に向く季節としても、確かにかなり緯度が高いので、冬場にお勧めできるわけではありませんが、内陸のミネアポリスなどと比べると遥かに温かいですし、何より観光ポイントや娯楽の多くが都市部にあることを考えると、季節を問わず訪問してもいいように思われます。
総じて旅行しやすい地域と言えるでしょう。
なお、アメリカの観光地を網羅したリストはこちらです。
都会オブ都会、ニューヨーク
東部の中心都市は、なんといってもニューヨークです。世界中で、この街の存在を知らない人の方が少ないくらいでしょう。世界経済の心臓であるウォール街があり、ほぼ全世界の独立国が加盟する国連本部があります。タイムズスクエアは世界を代表する劇場街ですが、ブロードウェイと言ったほうがピンとくるかもしれません。エンパイア・ステート・ビルは、名前だけは誰もが知っていますし、9.11のテロが起きたワールド・トレード・センターの跡地には、新たに全米一の高さを誇るワン・ワールド・トレード・センターが建設されました。
そして、アメリカを象徴するのがこちら、

自由の女神です。
マンハッタン島、これぞアメリカ、といった感じです。
そんなニューヨークでは、何をすればいいでしょうか? なんといっても文化とスポーツ。これらの鑑賞、観戦が第一です。

ブロードウェイのミュージカルといえば、世界の頂点です。しかし、この街は層が厚いので、ダウンタウンの劇場でも、またカフェやロフトでもミュージカルが上演されるのです。片っ端から見ていっても、終わりがないでしょう。
また、オペラやバレエも非常に盛んです。以下、これら文化活動に関するウェブサイトを一覧します。
チケットマスター(事前予約に使うサイト)
チケッツ(直前の空席を狙うサイト)
観光情報誌「where」
観光情報誌「Time Out」
キンキーブーツ(ミュージカル)
ブルーマングループ(オフ・ブロードウェイ)
ストンプ(オフ・ブロードウェイ)
メトロポリタンオペラ
アメリカンバレエシアター
ニューヨークシティバレエ
ニューヨークフィルハーモニック

それからスポーツ観戦も、やはり全米一です。
野球、アメフト、バスケ、アイスホッケー、サッカーと、ニューヨークには何れの種目についても複数のチームが存在します。観戦の機会には事欠かないでしょう。

してみると、ニューヨークでの過ごし方としては、日中はメトロポリタン博物館やニューヨーク近代美術館など、いくつもあるミュージアムをまわり、夜はオペラやミュージカル、スポーツ観戦に費やすと、そういう形になるかと思います。一方で人気のジャズクラブもいくつもあるので、そちらで夜を過ごしてもいいでしょうし。
心ゆくまで堪能するとなると、これだけで数日かかってしまう気がしますね。
ニューヨークの北……ボストンとその近郊
ニューヨークから北東に向かうと、ボストンがあります。ボストン茶会事件はあまりにも有名です。アメリカ独立を口火を切ったのは、この街でした。

それゆえにか、この街には「アメリカ最古」とつくものがいくつかあります。ボストンコモンはアメリカ最古の公園で、ハーバード大学もアメリカ最古の大学です。チャールズタウン・ネイビーヤードに停泊しているコンスティテューション号に至っては、現代でも航行可能な世界最古の戦艦です。1797年10月10日に進水式を迎えてから、米英戦争でも活躍し、世界周航も成し遂げ、修復を経て、結果二百年以上も現役なのです。

このように歴史の面でも重要なボストンですが、他の見所としては、ボストン美術館が挙げられます。日本の浮世絵を含む多数の国内外の芸術作品が展示されています。
また、秋から春にかけては、ボストン交響楽団の公演が催されており、こちらも行けるならお勧めです。ボストンのシンフォニーホールは私も知っていますが、異様なくらいに音が響く場所でした。場所によっては1秒くらい、音が届くまでのタイムラグがあったりするくらいです。
それから、スポーツ観戦にも不自由はしないでしょう。四大スポーツすべてにおいて、チームがここに本拠を置いています。
ボストンからアクセスできる周辺都市もいくつかあります。
日露戦争の講和条約が結ばれたポーツマス、豪邸が立ち並ぶニューポート、映画「サウンド・オブ・ミュージック」のモデルとなったトラップ一家が最後に居を構えたストウなど、日帰りで見てまわれる場所です。ストウだけは少し遠いのと、自然豊かな場所を満喫する意味でも、1泊くらいはしたほうがいいでしょうが。

ただ、ここから更に時間をかけられるなら、メイン州を目指すのも手です。
鄙びたレンガ作りの街並みを楽しめるポートランド(メイン州、オレゴン州にも同じ名前の街があるので注意)を拠点に、アーカディア国立公園や、バクスター州立公園を目指す旅を楽しめます。アメリカ東部の自然を楽しむなら、ここが随一です。あと、名物のロブスターとブルーベリーも忘れずに味わいましょう。
ニューヨークの南……アメリカ建国の地へ
一方、ニューヨークから南西に向かうと、まずフィラデルフィア、続いてワシントンDCに出られます。どちらも合衆国建国の要となった街です。

フィラデルフィアでは、インディペンス国立歴史公園を訪ねるべきでしょう。アメリカ独立に関する史跡の数々がみられます。独立を宣言する際に鳴らされたリバティ・ベル、第一回大陸会議が開催されたカーペンターズホール、独立宣言が採択された独立記念館など、歴史を知る上では見逃せないポイントが多数あります。

エルフレス小径には、アメリカ最古の住宅街が残っています。18世紀からの建造物ですが、その多くにまだ、一般市民が入居しています。
フィラデルフィアは美術館も充実しています。バーンズ財団美術館、フィラデルフィア美術館、ロダン美術館と、どれも一級のアートが置かれている場所です。
また、大都市なのでもう改めて述べるまでもないですが、一流のオーケストラがあり、四大スポーツの拠点があります。
このフィラデルフィアを拠点に、いくつもの周辺都市を見てまわることができます。
特に魅力的なのはランカスターでしょう。アーミッシュの人々が昔ながらの生活を続けている場所です。列車で一時間ほどの距離でもあり、日帰りも可能です。

他にも、アトランティックシティやウィルミントンといった小都市にも近いです。前者はカジノとボードウォーク(木の桟橋)で有名で、後者はデュポン社の博物館が楽しめます。見所が多いとはいえず、何れも日帰りで行く場所でしょう。
最後にワシントンDCです。誰もが知っているアメリカの首都ですが、最初の首都はニューヨークで、次はフィラデルフィアでした、
ここからだと、実は南部の入口であるリッチモンドとフィラデルフィアと、あまり距離が変わりません。
この街の観光は、政治的なところが中心……かと思いきや、案外そうでもありません。というのも、ホワイトハウスは立ち入りできません(国会議員の許可が必要)し……

国会議事堂には見学ツアーがあります。ただあとはワシントン記念塔とか、二次大戦記念碑、リンカーン記念館、アーリントン墓地と、名前だけは知られている場所が多数あるのですが「一度見たら終わり」なところが多く、意外とあっさり見終わってしまうのです。

そんな中、時間をかけて見物することになるのが、スミソニアンです。
世界最大の博物館、美術館の集合体をスミソニアン協会といいます。これは、イギリスの科学者だったジェームス・スミソンが合衆国に寄贈した財産を基に、人類の知識の普及と向上を図ることを目的とした国家機関です。
よくスミソニアン博物館といったりしますが、実はそんな博物館など存在しません。20近い博物館すべてがスミソニアンなのです。

スミソニアンのウェブサイトはこちらです。出かける前に予習しておきたいところですが、現地の博物館はすべてWIFIが利用可能になっています。
アメリカを少しずつ知っていく
アメリカ東部は、割とわかりやすい旅行先だと思います。
文化とスポーツを満喫するならニューヨーク、歴史を堪能するならフィラデルフィアとワシントンDC、自然を見たければメイン州まで出かけていけばいいので、うまく計画を立てれば、日程をコンパクトにするのも可能ですし、逆にたっぷりと周辺小都市を巡ってみるのも可能です。
アメリカというのは、一つの国というより、一つの世界であるといえるかもしれません。
一部を切り取ってみても全貌は見えてきません。いろんな地域を何度かに分けて訪問して、やっと把握できる、そんな場所なのだと思います。