マチュ・ピチュの発見
二十世紀初頭、南米ペルーの奥地を彷徨い歩くハイラム・ビンガムが、古代の遺跡を発見……
彼が見つけたその遺跡は「マチュ・ピチュ」の名で、世界中に知られるようになりました。
マチュピチュ。
歴史に詳しくない方でも、この名前だけは、どこかで聞いたことがあるはずです。
霧の立ち込める谷間に、緑の峰がぼんやりと浮かんでみえる。
古びた石積みは、今も崩れることなく聳え立つも、既に頭上を飾る藁葺き屋根はない。
足下の石畳は、どこまで続いているのか……
ヨーロッパ人が南米に訪れる直前まで、繁栄の絶頂にあったインカ帝国。ですが、その歴史の多くが謎に包まれたまま、滅び去ってしまいました。
ペルーのケチュア地帯に広がるこれらの遺跡には、たった五百年前まで人々が暮らしていました。それがあっという間に廃墟となり、密林に覆われ、二十世紀初頭まで、その存在すら忘れ去られていたのです。

当時は、精巧な石組みや長大な道路といったインカのテクノロジーの高さに、世間の理解が追いついていませんでした。
ほぼ石器文明、あっても僅かな金や銀、せいぜい青銅くらいしかなかったはずのインカの人々が、どうやってこんな建造物を拵えたのか……
だから、インカという言葉には、どこか神秘的な響きが伴っています。
アンデスの天空に聳える空中楼閣。
何も知らずにただ見るだけでも、心動かされるものがあることでしょう。けれども、インカの歴史を知って眺めるなら、その感動は更に大きなものになります。
観光大国・ペルー

マチュ・ピチュが存在するのは南米のペルーですが、ここには他にも数多くの遺跡が存在します。オリャンタイタンボ、ピサック、モライ、サクサイワマン……数え切れません。
遺跡ばかりではありません。なんといってもインカ帝国の中心地だったクスコ。ここはスペイン植民地支配の中心地でもあり、今でも古い街並みが残されており、そぞろ歩くだけでも異国情緒に胸が満たされます。
しかも、それで終わりでもありません。南に向かえばインカ発祥の地であるティティカカ湖があり、そこにはいまだに葦で編んだカヌーの上で暮らす人々がいます。北に向かえば、高原地帯より下った先にあるイキトスで、アマゾンの源流に出会えます。
首都リマは近代化された大都市で、古色蒼然としたクスコとは対照的な景色を目にできることでしょう。ここでは、インカ時代の貴重な遺物が博物館に収蔵されています。また、ここから飛行機に乗ってナスカの地上絵を見に行くこともできます。
ちょっとした集落に立ち寄るだけでも、驚きに出会えることでしょう。この地に暮らしていたインディヘナ達はスペイン人と交わり、文化を変容させていきました。独自のフォルクローレと民族衣装は、思いもよらないデザインへと進化していきました。

ペルーは、世界屈指の観光大国なのです。
一生に一度、でもその値打ちはある
残念ながら、ペルーは日本の裏側にあります。地球を半周して、やっと到達できる遠方の地なのです。
しかし、それでもなお、訪れる値打ちがあると言っておきましょう。ハワイや台湾といった、リゾート要素の大きい旅行先ではありません。一生に一度しか行かない場所かもしれませんが、その一度にこそ、価値があるのです。

この世界の、他のどの地域でも見られない、文化のキメラ、民族のカオスを、目にしてみませんか。