ハワイ、それは誰もが知る特別な場所

イントロダクション
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ハワイのステレオタイプ

『青い空、白い雲……砂浜にはビキニを着た若い日本人女性がいて、キャーキャーいいながら波打ち際へと駆けていく』
『咲き誇るブーゲンビリアを見つめつつ、ビーチチェアにもたれながら、のんびりウクレレの響きに耳を傾ける』
『褐色肌の若い女性がフラダンスを披露、目が合うと花輪を持ってきてかけてくれた……派手なアロハシャツがますます派手になった』

 ハワイ、という単語から思い浮かべるイメージはと言われれば、こんな感じでしょう。とりあえず、「毎年、紅白歌合戦が終わると、必ず芸能人が行く場所」みたいな。
 まったく知識も教養もなくても、あのカメハメハ大王の名前は誰でもなんとなく知っています。某国民的人気漫画の必殺技にも採用されるくらい、メジャーな名前ですから。

カメハメハ大王像……実はモデルは本人ではなく、その側近らしい

 海外リゾートといえばハワイ。何はなくとも、とりあえずハワイ。
 日本においては、戦後、海外旅行は制限されていました。1964年に自由化されるのに先立って、映画「ハワイの若大将」が公開され、多くの日本人の旅行欲をかきたてました。また、1961年には、サントリーがこんなキャッチコピーでウイスキーを販売しています。

「トリスを飲んでハワイへ行こう」

時代を感じるキャッチコピー

 そして文字通り、日本人観光客はハワイに殺到したのです。1964年の日本の海外渡航者のおよそ四分の一はハワイを目指しました。そしてまた、ハワイの側でも、受け入れた観光客の四分の一が日本人だったのです。
 以来、景気の波に左右されながらも、ハワイは日本人にとって、主要な旅行先であり続けています。
 たとえば、旅行ガイドブック「地球の歩き方」を見ると、なんとも理不尽です。中央アジアのウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギスの五カ国が一冊にまとめられていて、しかもたったの260ページしかありません。なのにハワイはというと、オアフ島だけで530ページで、その他の島々の情報をまとめた別冊があって、そちらも350ページです。

 そんなにハワイが好きなのかと、そう言いたくもなります。

知っているつもりで、実は知らない、それがハワイ

 確かにハワイは、完全に観光地化されている場所です。
 だから、完成されたリゾートを好む傾向にある日本人には、非常にウケがいいです。実際、日本人の旅行の選択傾向はずっと変わっていません。温泉のように「美食」「快適」を兼ね備えた場所を目的地とすることが多く、だからそもそも海外旅行の市場は、国内旅行の半分しかありません。
 その中でも、ハワイは「きれいなビーチがある」「世界中のおいしいものがある」「観光化が完成しており、環境も快適」「日本語も通じる」といったように、海外とはいえ、日本人の望むものが揃っているのです。
 もともと海外旅行市場は若い女性が最大多数を占める顧客層なのですが、彼女らに支持されることで、ハワイは今でも海外旅行の王座に君臨しているのです。

かつてはタロイモ畑だったワイキキも、すっかりビーチリゾートに

 逆に、新たな発見を求めるバックパッカーなら、見向きもしないでしょう。
 ビーチなんか見に行ってどうするんだ、と。

 しかし、本当のところ、ハワイはそれだけの場所ではありません。
 少しでも学べば、ここは世界でただ一つの場所、本当に特別な島々なのだとわかってくるはずです。

キラウエア火山は、今も荒々しく溶岩を吐き出し続けている

 まず、独特の自然環境があります。
 最大の面積を誇るハワイ島を筆頭に、北西方向に居流れる島々は、どれも年代の新しい火山島です。ハワイ島のキラウエア火山は、今でも継続的にずっと噴火し続けています。
 また、その新しさゆえに、土着の動植物は運よく漂着した鳥類と昆虫などに限られていて、それらは数千万年の間に独自の進化を遂げました。かつ、島内には劇的な高低差があり、それが特殊な気候を形作っています。

フラダンスは、名前だけは有名だが、本来の姿は意外と知られていない

 文化もまた、独特です。
 十八世紀末にクックの訪問を受けるまで、この島にいたのはポリネシア系の人々だけでした。しかし、それからたった二百年あまりのうちに、石器時代から一気に現代文明まで飛び越えることになります。それに加えて、アメリカ人、中国人、日本人、韓国人、ポルトガル人、サモア人、最近ではベトナム人まで、ありとあらゆる人種、民族の集団が移住してきました。
 そこにあるのは、ハワイならではの混沌です。文化と文明の混淆が生み出した、特有の世界があるのです。

ハワイ出身のアメリカ大統領、バラク・オバマ

 世界の歴史とも無関係ではありません。
 韓国初代大統領の李承晩もハワイ出身です。また、最近でも、アメリカ初のアフリカ系大統領となったバラク・オバマは、ハワイ州出身者としても初めての大統領でした。
 太平洋に浮かぶ絶海の孤島に過ぎないように見えるのに、その小ささに比して世界に与えるインパクトは大なのです。

 表面だけ切り取れば、極端なまでに観光地化された、無個性なビーチリゾートに過ぎません。
 ですが、一歩踏み込めば、そこには唯一無二の異世界があるのです。誰もが知っているのに、みんな気付かない不思議な、特別な世界が。

 たかがハワイという先入観を捨ててみてください。
 予想もしない面白さが、きっと見つかります。

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