ハワイの言葉とアイデンティティ

ハワイ
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公用語は英語だが……

 海外旅行の経験がたくさんある人は、言葉なんかできなくても意思疎通ができることを知っています。もちろん、言語を多少なりとも知っていたほうが、かなり便利になることも承知していますが。
 では、ハワイでは何語で話せばいいのでしょうか? 仮にも外国ですから、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

 ハワイでは、基本的に英語が公用語です。ハワイ語とあわせて1978年に公用語に指定されましたが、英語ができなくてハワイ語だけわかる日本人なんて、ほぼいないでしょう。

 日系人も少なくない上に、日本人観光客が非常に多いこともあるので、観光地で観光客相手の人と話す分には、日本語でもそこそこ通じるようです。具体的にはツアー会社の人、それにちゃんと選べばホテルに日本語のできるスタッフもいたりしますし、日本人観光客が殺到するショッピング関連……アラモアナショッピングセンターとかでは、かなりのところ、日本語でいけてしまいます。
 ただ、もちろん日本語が通じにくいところもあります。ローカルの人達も行くような場所では、まず日本語は役に立ちません。

少しでもハワイのことを勉強しておくべき

 じゃあ、英語ペラペラなら安心なんだ! と思うかもしれません。もちろん、完璧な英語で話せるのなら、ほとんど大丈夫です。
 但し、ハワイにはハワイならではの事情というものもあるのです。

 まず、地名の多くはハワイ語です。
 島の名前……オアフ、マウイ、ハワイ、モロカイ、カウアイ……どれもハワイ語です。
 街や区画の名前もそうです。ホノルル、カイルア、ワイキキ……

 しかし、ただのカタカナと思ってはいけません。

 LikeLike Highway「好き好き高速道路」なんて読んだら、大笑いされるでしょう。
 リケリケ、つまりカラカウアとリリウオカラニの妹でカイウラニ王女の母親の名前です。カラカウア通りなんてのもあるので、歴史を知っておかないと恥をかくことがあるかもしれません。

カラカウア通り

 現地の人は、ハワイ特有の感覚で土地鑑をもっています。
 方角を表す言葉といえば、日本語なら「東西南北」が出てくるでしょう。ですが、ハワイは島です。それも高低差の激しい地形です。よって……

 マウカ……島の中心側
 マカイ……海側

 という表現が実用的な意味を持ちます。
 ホノルル市内であればダイヤモンドヘッド側とかエヴァ側とかいった表現もされるようです。
 それでローカルの人々、いえ、「ロコ」には通じるのです。

 人の名前も、英語にありがちなものばかりではありません。ハワイ語の名前を持つ人達も一定数いますし、今でも新たにそう名付けられる子供がいます。

 ハワイ英語の語彙は、英語とハワイ語のみならず、プランテーションで働く日系人からは日本語、中国人からは広東語、ポルトガル語も混ざれば、フィリピンからやってきたイロカノ語まで取り込まれているのです。

 そう、ハワイで話されている英語は、ピジンなのです。

虹の世界

 ハワイの人達は、そんな混ざり合っている自分達を、どんな風に捉えているのでしょうか。
 これも一概には言えません。

 観光客としてハワイの土を踏む限り、よほどのことがなければ歓迎はしてもらえるでしょう。ハワイの最大の収入源は観光で、これだけで州全体の25%の稼ぎになっているのですから。軍とあわせて、35%。ハワイの経済は外部に依存しっぱなしの脆弱なものでしかないからです。
 しかし、ハワイの歴史を知らず、文化にも配慮せず、ただ遊ぶところと心得てビーチで騒ぎ立てるだけでは、ロコ達には「ハオレ」だと思われてしまいます。ハオレとは白人のことですが、かつての侵略者としての白人のような、無神経な振る舞いをする人物にも向けられる言葉です。

 ハワイの人々は、たいていの場合、自分達の出自をしっかりと持っています。アメリカ市民であるという以前に、例えば「ハワイアン・チャイニーズ」だと認識していたりするのです。なんとなくハワイ人、というわけではなく、先住ハワイ人でもあり、中国人でもあるのだというように。
 ハワイでは人々は常にシェイクされています。けれども、混ぜても混ぜても、出自を失うほどには、まだ溶け合ってはいないのです。

微妙にカキ氷とは違うシェイブアイス

 一方で、ローカル文化の中には、もはや起源のわからないものもあるようです。
 たとえばシェイブアイス、つまりカキ氷ですが、これが日本起源かといわれると、ハワイ人にしてみれば断言できないもののようです。本来の日本のカキ氷とは違いすぎるからです。何がどのように混ざり合ってできたのか、今ではもう、誰にも説明できません。

 思えば、ハワイの併合から百年ちょっと、移民の波が押し寄せてからも百五十年経ったかどうかなのです。
 ハワイ人が互いに溶け合うまでには、もうしばらくの時間が必要なのでしょう。

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