ウズベク人の生活

ウズベキスタン
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スムは絶賛インフレ中

 ウズベキスタンの一般市民の生活は、どんなものでしょうか。
 なかなか一概にこれと言えないところがあるのですが、彼らの経済感覚から述べるのが適当でしょう。

 世界共通、どこでも大事なものはなんといってもお金です。しかし、このお金こそが、ウズベキスタンでは厄介そのもの。通貨単位は「スム」というのですが、この交換レートが凄まじいのです。
 2016年時点では、1ドル3000スムくらいでした。但し、これは公式レートです。闇市場では、更に大きな差があります。だいたい1ドル6000スムくらいでした。私が滞在していた時には、サマルカンドの市場に札束を手にした男がウロウロしていました。エクスチェーンジ、と言いながらです。
 それがカリモフ死後、2017年に公式レートが闇レートに合わせる形になりました。今では更にスムの価値は下がって、1ドル8000スム以上という状況です。

 おかげで国内はインフレです。
 商店に行くと、「千スム数えマシン」なるものがあって、これが札束を超スピードで数えてくれるのです。

 なぜこんなことになるのか?

二重内陸国の経済

 ウズベキスタンは、二重内陸国です。
 この不利は、工業立国を目指すと、ジワジワ効いてきます。

 もしコンテナでウズベキスタンに貨物を持ち込んだり、逆にウズベクから輸出したり、という場合、必ずいずれかの国の鉄道網に頼ることになります。
 イランのバンダラバスから北上して、アフガンを通ってウズベク国内に入るか。シベリア鉄道を通ってはるばる東の彼方からタシケントを目指すか。或いは北西方向からの路線を用いるか。ちなみに、中国からの貨物路線はカシュガルで途切れており、繋がっていません。
 確かにウズベク国内にはGMの工場もありますし、韓国も経済的に進出しています。けれども、やはりそこは海に面した国々のようにはいきません。

 要するに、国内には有力な産業があまりありません。既に他のページで述べたように、ドライフルーツの生産は盛んですが、輸出手段が限られます。また、世界有数の金の産出国ですが、こちらは一部の利権集団がガッチリ握っています。
 よって支配者層を除けば、あとは外国で稼ぐ以外にありません。そして、もっとも手近な稼ぎ先が、やはり旧宗主国……ロシアなのです。

 ウズベクの男達はロシアに行き、そこでルーブルを稼いで、故郷に送金します。それは彼らにとって、大きな収入になります。
 ヒヴァの木工オジさんの言葉を借りると、こんな感じです。

お仕事中のヒヴァの木工オジさん

「この辺のホテルで一ヶ月働くと、だいたい100ドルの稼ぎになる」
「だが、ロシアに出稼ぎに行くと、300~400ドルにもなる」

 だから、出稼ぎなしのライフスタイルなど、考えられません。そして、ロシアを巡る情勢次第で、彼らの稼ぎも大きく変わります。
 また、結果として、街には女が多いです。国内に居残る妻達も、少しでも利益を得ようとするのです。例えばヒヴァでは、土日には女達が総出で観光客向けの露店を営業していたりします。

女達はこういうお菓子の露店を開いて観光客に声をかける

 他の地域でも同様です。この写真のように、ブハラの裏路地に簡単なお菓子の露店を開いて、観光客が通り過ぎるのを待ち構えていたりします。で、観光案内をするからカネをくれ、と持ちかけてくるのです。当然ながら、彼女らの夫は、ロシアで働いています。
 彼女らの言葉を借りれば、

「ブハラでは、月200ドルもあればなんとか暮らせる、300ドルもあれば十分」

 但し、なんでも安いということはなく、例えばなんかを買おうと思うと、やはり1000万円くらいはするとのこと。
 ただ、これらのウズベク人のコメントは、私が直接彼らから聞いたものをそのまま書いただけです。本当のことを言っていたのか、裏づけは取れていないので、事実かどうかはわかりません。
 とはいえ、もしこれが本当のことなら、300ドルで一ヶ月暮らせてしまうのですから、彼らにとってiPhoneがどれほど高級品か、わかろうものです。社会主義時代に作られ、今でも機能しているツムという百貨店があるのですが、薄暗い店内には、まさに300ドルでiPhoneが陳列されていました。

 それでも実際のところ、彼らは言うほど貧しくないのではないかとも思います。こちらの写真をごらんください。ブハラで実際に立ち入った民家の様子です。

左下にロシアンミュージックを流すステレオが

 動画で撮影したので絵が汚いですが、部屋の中は清潔でしたし、ロシアンミュージックを流すためのステレオもありました。来客にブラックティーとチョコレートを供する余裕もあったのです。
 地下には家禽を飼育するための空きスペースもありました。ただ、本当のところ、裕福だったのかどうかはわかりません。一家の父親は私と顔を合わせようとせず、別棟に引き篭もっていました。仕事がないからです。

この地下にニワトリを飼うスペースがある

 サマルカンドでも、一般のお宅にあがりこみました(そしてシャシリクとビールをご馳走になりました)が、こちらはかなり狭苦しい家でした。見たところ二部屋くらいしかなく、そこに父、母、娘が二人と窮屈そのものでしたから。
 それでも、見た目以上にはお金を貯め込んでいたのではないかと思いますが。家には液晶テレビもありましたし……。

この箪笥の上には大きなぬいぐるみ、右側には液晶テレビがあった

外国を夢見るウズベク人

 こういうわけですから、ウズベク人の外国への視線がどんなものか、想像に難くありません。日本からやってくる観光客は「お金持ち」なのです。航空券だけでも10万円、つまり1000ドルくらいは出しているわけですから。
 よって、海外と繋がりたいウズベク人は多いのですが、それはかなりのところ、制限されています。外国に憧れる国民が増えては不都合とばかり、スカイプも禁止されています。FACEBOOKのチャット機能は、私が訪問した頃にはまだ使えましたが、近々制限されるかもしれない、と言っていました。

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