韓国語あれこれ

韓国
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正しい発音は?

 いきなりですが……

「李順華」

 という人名を見た時、どう読むかわかりますか?
 これだけだと、中国人なのか韓国人なのかわからないので、韓国人という想定です。

「Googleの翻訳にかければ一発!」

 なんて思っていたら、甘いです。
 実際のものとは全然違う発音を弾きだしてくるので、要注意です。

 正解は後にまわすとしまして。
 ガイドブックなどを見ても、たまに首を傾げたくなるような発音表記が掲載されていることがあります。

慶尚北道

「慶尚北道」

 これは読めますか?
 地名だから、旅行ガイドブックにルビが振ってあると思います。

慶尚北道の位置

 私の手元には「地球の歩き方(2018)」があるのですが、そこではこうなっています。12ページ目によると……

「キョンサンプクド」

 キョンサン、はいいとして。プクドはないだろう!? と叫びたくなります。こっちはGoogle翻訳でも、ちゃんと出るのですから。
 そう、実際に発音するときは「プット」となり、「ク」とは言わないし「ド」と濁ったりもしません。

濁る場合、濁らない場合

 どんな場合に濁って、どんな場合に濁らないのか。
 具体的に見ていきましょう。

朴槿恵

「朴槿恵」

 ご存知、パククネさんです。
 パク、クネで、名前のほうが濁っていません。グネとは言わないのです。

 では、次。

文在寅

「文在寅」

 こちらも大統領の名前です。ムンジェインさんですね。
 ムン、ジェインですから、濁っています

 しかし、こういう単語だと濁りません。

「在日」

 在日韓国人の在日です。
 こちらはチェイル、普通、ジェイルとは言いません。

 なので、文在寅も姓をなくして

「在寅」

 とだけ呼んだ場合、チェインになります。
 まず、基本的なルールとして、文頭は濁らない文中(単語の中)は濁るかもしれないということがいえます。

パッチン……どんな音で終わるのか

 しかし、文中(単語の中)であっても濁らないケースもあります。それが

「慶尚北道」
「朴槿恵」

 なのです。
 北道(북도)、朴槿恵(박근혜)とそれぞれハングルのスペルを見ると、それぞれ文字の下の方に鍵カッコみたいなのが見えますね。
 これをパッチン、もう少し厳密に言うと、キウンパッチンといいます。

 ハングルは、左が子音、右が母音です。
 そして、文字の下にパッチンがあったりなかったりします。
 ある場合には、その発音をどんな口の形で終えるかを指示しています。

 北とか朴の場合は、K音が出せる状態の口の形にして、小さく「ッ」という感じにするのが正しいです。
 だから「パク」ではなく「パッ」に近いです。

 最後の発音がK音で消えているので、そこから濁って「グネ」と言うのは、非常に言いにくいです。だから濁りません。

 試しにK音で発音を終えようとしてみてください。日本語だと「ッ」の区別がないので、体感したければ、

「クッカックッカッ……」

 と繰り返してみるとわかります。
 ある程度喉が開いて、上顎と下顎が、前から奥のほうまで空間を作っているのがわかるかと思います。

 逆に、もし無理やりでも「パッグネ」と濁らせようとしたら、口はその形にはなりません。
 人にもよるかと思いますが、多くの人が、自分の舌を噛むような口の形をするはずです。でないと、G音を始める準備が整わないからです。この場合、発音は「パッ」のところで終わりはしますが、口の形はT音を始めるような状態になっていると思います。それにしても、言いにくいはずですが。

 だから、K音で終わっている場合には、続く音は濁らないのです。

南漢山城

 パッチンは、他にも音韻を変化させます。
 発音をどう締めくくるかを指定しているのがパッチンなので、口を閉じたりする動きも当然あります。それが結果として「ン」という発音に繋がったりします。

「南」(남)

 カタカナ表記だと「ナム」ですが、「ム」と発音するわけではありません。
 パッチンが四角、つまりミウンパッチンなのでM音で発音を締めくくることになります。だから口を閉じます

 さて、では、これはどう読むでしょうか。

「南漢山城」(남한산성)

李朝の仁祖が清朝のホンタイジ相手に抗戦した南漢山城

 さっきの「地球の歩き方(2018)」を見ると、こっちは正しいんですよね。首を傾げたくなるのですが……
 はい、「ナマンサンソン」です。

 韓国語では、H音が弱いのです。
 だから、直前の口の形がMだったりNだったりすると、そちらの発音に乗っ取られてしまうのです。
 単純に

 NAM-HANSANSON

 ハイフンのあるところを続けて発音しようとしたら、やりづらいと実感できるはずです。
 だから発音が混じって、ナムハンではなく、ナマンになるのです。

 日本語でよく「キムチ」なんて言ったりしますが、これもおかしいのです。M音で口を閉じているだけなので、「キンチ」と言ったほうが正確かもしれません。

キムチ、というのは不正確

 昔、在日韓国人の一世世代が日本で暮らし始めた頃、彼らが日本人かそうでないかと見分けるのに、ある単語を言わせるという方法がありました。割と有名ですが……

「布団」「十円」

 これを韓国人は言えないのです。
 布団はHUTONじゃなくて、濁るので「フドン」(うどん)になってしまうし、JUUENは文頭が濁らないので「チュウエン」になってしまうからです。

古臭い名前

 ということで、最初のお題に戻ります。

「李順華」(리순화)

 リ・スンファ?
 スンファ、ではなくて、N音がH音を乗っ取るのでスナになります。
 あと、リは正しいですが、そうは読みません。イです。

 実は日本語もそうなのですが、韓国語も、語頭にR音が来るのを嫌います。だから、しばしば読まれず、子音だけが取り残されるのです。
 よってこれはイ・スナと読むのが適切なのです。パク・クネ(박근혜)もそうですね。クンヘ、なのですが、N音がH音に優先するからクネなのです。

 なお、余談ですが……
 韓国の伝統的な名前ということだと、むしろこんな感じです。

「李華順」

 みたいな。
 こっちはもちろん濁らないので「ファスン」です。
 これに似た名前だと

「月順」(월순)

 なんてのもありますね(ウォルスンと読む)。
 しかし、こういう名前を街中で見かけるのは、割と難しいはずです。

 実は、こういう名前を持った在日の女性を個人的に知っています(姓は別です)。
 彼女は、自分の名前をキレイだなと感じていたのですが、韓国に渡航して、向こうであれこれ人と会って自分の名前を名乗ったら、失礼な人から大笑いされたそうです。
 何が起きたのかわからず混乱したそうですが……

 こういう「華順」「月順」という名前は、こちらでいうところの「おトヨ」「おタミ」みたいな、日本の古い古い名前と似たようなニュアンスがあるそうです。
 これがお婆ちゃんでもないのに若い女性の名前が「田中フミ」だったらビックリしませんか?

 彼女は若干、落ち込んで日本に帰ってきました。もちろん、すぐ笑い話になりましたが。

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