旅行とは生き残ることと見つけたり
海外旅行とは何か?
私に言わせるなら、それは「サバイバル」です。
「いや、私は遊びに行きたいのであって、危険を冒したいわけじゃないんだけど……」
「大事なお金や休暇を使ってまで、つらい思いをしたくない」
おっしゃること、ごもっともです。だからこそ、日本人の多くは国内旅行に比重を置き、美食と快適を追求しているのです。
しかし、国内には国内の環境しかなく、ゆえに「突き抜けた何か」がありません。私もそれを求めて、日本のあちこちを旅したこともありました。ですが、美しい尾瀬の湿原を目の当たりにしても、日常があまりに近すぎるがゆえに、頭の中を真っ白にできなかったのです。
そういう人はどうすればいいか?
驚きや感動を求めるなら、外に出るしかないのです。
しかし、外国というのは環境が違うから外国なのです。
例えば、目を楽しませる景観を生んでいるのは、その国の気候。感動的で素晴らしいものかもしれませんが、日本に住み慣れた人には過酷だったりもします。
よって、適切な防御策を講じる必要があるのです。
ペルー・クスコでの実体験
ペルーでインカの遺跡を見てまわるというのは、それはそれは好奇心を刺激される体験でした。しかし、インカの都があったクスコは標高3300メートルの高地です。一般に、標高が1000メートル上がるごとに気温が6度下がりますから、海岸地帯のリマが真夏でも、クスコは初春並みの肌寒さなのです。
それでも、日中は日差しもありますし、ちゃんと服を着て動き回っている分には、耐えられなくもありません。問題は夜です。

夜? ホテルで休んでいればいいんじゃないのか?
そうなのですが、それは普通の場合です。私は旅の終わりにトラブルに見舞われました。

「飛ばない?」
ペルーの首都はリマです。クスコではありません。クスコから国内便でリマに移動し、そこからアメリカの空港経由で日本に戻る。そういうものです。
しかし、クスコはなんといっても高度3300メートルの高地。理由はよくわかりませんが、飛行機が急に飛べなくなったりもするのです。悪天候のせいかと思ったのですが、それにしては空も晴れていたのですけどね……
とにかく、飛びません。
つまり、リマから予定通りの乗り継ぎもできないということです。
では、どうしたらいいか。とりあえず、待たされます。空港のカウンターも大混乱で、とりあえずチケットを確認して、乗客に次の飛行機を手配するか、払い戻しをするかしなくてはいけません。
そういうわけで、ひたすらクスコ空港のカウンターの前に行列を作って立ち尽くすことになったのです。
すると……
寒い。
ハンパなく寒いのです。
クスコは初春並みの肌寒さとはいいますが、高地というだけでなく、内陸です。特に日本の夏場、つまり7月頃の観光シーズンに行くと、昼間の気温は20℃近くまで上がる一方、夜間の最低気温はヒトケタ、下手すると氷点下近くまで下がります。もはや真冬です。
なのに、ひたすらロビーで待つのです。外気が吹き込んできますし、夜遅くもなると、ショップが閉店し始めます。そうなると、温かいコーヒーも買うことができず、暖房の効いた飲食店で時間を潰すこともできません。ひたすら続く寒さの中を、ただ耐え続けなくてはいけなくなったのです。
頑健な若者なら、この状況もスルーできるでしょう。おもむろに荷物から読みかけの本でも取り出して、大きなリュックを椅子代わりに、のんびり読書に耽ってみるのも悪くはありません。
しかし、幼児や老人は、とてもではないですが、我慢しきれるものではありません。気持ちの問題以前に、体力がついていかなくなるのです。
そこで、このアイテムがあれば、状況を緩和できます。

ダイソーの非常用アルミシート。百均の品です。
キャンドゥにも類似商品がありますが、いずれで探すにせよ、ある程度規模の大きい店舗でないと、置いてないと思います。基本的には、野球やサッカーの試合などを、雨の中でも観戦するために使うモノです。
たった百円ですが、その利用価値は百円どころではありませんでした。
薄っぺらい金属シートですが、断熱性はなかなかのものです。空気をダイレクトに遮断するので、内側は確実に温かくなってきます。
また、今回は関係なかったのですが、もしこれが屋外で、雨に降られていた場合であれば、その有用性はセーターにも勝ります。羊毛のセーターは多少は水を弾きますが、やはりそのうちに沁みこんでくるものです。ですがアルミシートなら、一切水を通しません。そして水が、どれほど体温を奪うか、ときにそれは命にすら関わるほどであるというのは、サバイバルの常識です。
重さもなく、このように購入時点では小さく折り畳まれており、荷物に忍ばせておいてもまったく嵩張りません。
同行者が持ち込んできたのを見た時、私は「いらないだろう」と鼻で笑ったのですが、いざ役立ってみると、反省せざるを得ませんでした。
海外旅行はいつもと違う環境に身を置くことでもあります。
いざという時のため、こういう保温系アイテムを持っておくことは、旅の安全度を引き上げるのに大いに役立つことでしょう。