超大国の素顔

イントロダクション
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知っているようで知らない国

「アメリカはでっかい田舎なんだよ」

アメリカの田舎

 漫画「バナナフィッシュ」(吉田秋生作)の中に出てくる台詞です。

 私達は、アメリカをどれだけ知っているでしょうか?
 テレビをつければ、毎日ウォール街の動向が報道されます。国際ニュースでは大統領の発言や行動がいちいち伝えられます。ホワイトハウスの前の芝生の上で、日本の報道関係者が声を張り上げるのを、私達は何度も目にしています。
 ニューヨーク、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ボストン……こういう大都市の名前も、頻繁に耳にします。それだけでなく、これらの街並みもまた、当たり前のようにテレビモニター上に映し出されます。

ニューヨーク・ウォール街の証券取引所

 だから、私達はアメリカを「こういうもの」だと思っています。
 それは半ば事実ではあります。

世界で最も影響力のある国家

 今後、歴史がどうなるかは誰にもわかりませんが、仮にもし、未来の人々がこんな質問をするとしたら、あなたならどう答えますか?

「20世紀後半から21世紀前半にかけて、世界で最も大きな影響力を有した国家はどこか?」

 世界中の誰に尋ねても、答えは同じはずです。
 そう、アメリカ合衆国世界最強の超大国です。その影響力は、ただの一国家の枠には収まりません。

お金といえばドル、ドルといえばお金

 アメリカの通貨ドルは、世界の基軸通貨です。海外旅行に行く時には、誰もが一定の金額をドル建てにして持ち込みます。
 分散投資をする際、アメリカ人はその半分をアメリカに、それ以外を国外の資産に割り当てるそうです。つまり、それくらい大きな市場と富の集積があるのです。

アメリカの軍事力を支える海兵隊

 アメリカの軍事力は、疑いなく世界最強です。しかもその防衛範囲は自国に留まらず、日本や韓国はもとより、太平洋の広い範囲に及んでいます。サウジアラビアなどの同盟関係にある国々にも米軍は駐留し、良くも悪くも地域に安定をもたらしています。そのために、半ば皮肉を込めて「世界の警察」などと言われたりもします。
 また、アメリカで話される英語は、世界の共通語の役割を果たしています。
 アメリカで生み出された文化は、すぐに世界の標準になります。世界中で映画産業が育ってきているとはいえ、まだまだその頂点は、ハリウッドのものになったままです。
 プロスポーツの世界でも、多くの場面で世界の中心を占めています。
 誰か一人、地球上の人類で最大の権力者を指名せよ、と言われれば、ほとんどの人がアメリカの大統領を選ぶでしょう。

アメリカの素顔

 しかし、その背景にあるのは、広大なアメリカの大地なのです。

美しいアメリカの自然

 アメリカは先進国だ、と私達は強く感じていますし、それは事実なのですが、人口百万人を越える大都市は十もなく、十万以上の都市も三百に満たないのが現実です。それら都市部の人口を合計しても、八千万人程度にしかなりません。一方で、アメリカ全土の人口はというと、三億三千万人にもなります。大多数の人は、人口十万人以下の小都市、または農村に暮らしているのです。
 テレビに映し出されるアメリカの姿と、アメリカ人自身の実感するアメリカ。そこには大きなギャップがあるのです。

アメリカは、旅行者の目的を厳しく問う

 さて、そんなアメリカですが、いざ旅行しようと思うと、これがなかなか手強いのです。
 だって、何をしたらいいのでしょうか?

 アメリカは、旅行先としてそんなにわかりやすい場所ではありません。これがタイなら「北に行けばトレッキングと少数民族の村、南に行けばビーチと珊瑚礁、離島があるよ」というように一言で纏められるのですが、アメリカの場合は、そこまで簡単には片付けられないのです。
 更に、日本の二十倍以上の面積のあるアメリカは、見所が分散しています。一方で、歴史はというと、なにしろヨーロッパ人が入植してからのものしか残っていないため、京都や奈良を見るような味わいは期待できません。
 要するに、漫然と旅行しても「面白くない」国なのです。

 よって、アメリカ旅行を楽しむためには、テーマが必要です。
 いったい何をしたくてアメリカに行くのか。それが問われるのです。

ネイティブアメリカンのロックアート

 雄大な自然を目にしたいのか。
 ネイティブアメリカンの世界を堪能したいのか。
 それとも、入植者と建国の歴史を実感したいのか。
 ハイレベルなプロスポーツの世界を楽しみたいのか。
 それなりに歴史あるクラシック・オーケストラの演奏を聴きたいのか、ロックジャズの本場に立ち寄りたいのか。
 ディズニーキャラクターなど、ここで生まれたカルチャーをこの場所で体験したいのか。

 ……それとも、ただ農村に留まって、アメリカらしい空気を吸いたいのか。

 ガイドブックには、そういう大事なところが書いてありません。いえ、書けないのです。
 どこの都市にはどうすれば行けて、そこには何があって……という書き方をすると、このテーマというものがボケてしまいます。

 あなたが好きなものは何ですか?
 アメリカには、何を求めますか?
 適切な問いがなければ、答えを返さないのです。

 目的によって、日程も予算も、何もかもが違ってきます。
 旅行者にとってのアメリカは、ただの一つの国ということでは片付けられません。あまりに広大で顔の多い、一つの世界なのです。

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