アメリカ旅行のモデルコース立案について

アメリカ合衆国
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漫然と旅しても無駄な土地

 仕事でアメリカに行く人は少なくありません。しかし、観光目的でアメリカを訪れる人は、どれくらいいるでしょうか。
 残念ながら、統計情報は常に問題をはらんでいます。アメリカへの渡航者は、日本の観光旅行の数ではダントツでトップ(2016年度の統計で357万人)ですが、その4割はハワイ、2割はグアムです。オーロラを見に行くためにアラスカを目指す人も少なくありません。よって、アメリカ本土を目的地とする人は、ぐっと少なくなるのです。

 しかも、アメリカという国は、やたらと広すぎます
 その面積は日本の二十倍を超え、国内の時差が4通りもあり、観光地となりそうな場所も点在しているという……短期間に効率的に観光してまわるにはまったく不向きといえる旅先です。

 その上、歴史の浅さという問題もあります。
 もちろん、ネイティブアメリカンの歴史は非常に長いのですが、その遺物・文化のほとんどは失われており、一部を除いて観光名所になり得ません。ほとんどが白人入植後のものしかないので、ただなんとなく見てまわっても、感動は薄いでしょう。ヨーロッパ文明の延長線上にある建築物があるばかりで、まったく目新しくないからです。
 具体的にその地域や歴史を熟知していないと、受け取れるものが小さくなってしまうのです。

 だから、漫然と旅行をするつもりなら「アメリカはやめておけといわざるを得ないのです。

ピンポイントで目的を明確に

 では、どんな人にならアメリカ旅行をオススメできるのでしょうか。
 ズバリ「やりたいことがハッキリしている人」です。

 多くの人は「アメリカ旅行をしたい」という考えは持ちません。

「あの日本人メジャーリーガーが活躍してるヤンキースの試合を見たい!」
「ジャズっていえば、ニューオーリンズだろ?」
「やっぱグランドキャニオンだよね」

 このように、ピンポイントの目的地をもっている人が、アメリカ旅行に行くべきなのです。
 ヤンキースの試合を見たいなら、試合の日程次第ですが、ニューヨークに行けばいいので、東海岸に飛ぶべきです。ニューオーリンズはルイジアナ州にあるので、目的地は南部です。グランドキャニオンは西海岸に近いので、ラスベガスを拠点にすれば、選択肢も多くて便利でしょう。

 頭の中で目的地をパッといえない場合、アメリカ旅行は格段に難しいものとなります。
 物価は決して安くありませんし、移動時間も短くはありません。マイナーな地域に行く場合は、グレイハウンド(長距離バス)を使っても料金がほとんど安くならず、時間ばかりかかることもあり得ます。時間とお金がかかる割に、全然満足度の低い結果となるのです。

グレイハウンド(長距離バス)

 だから、改めて問い直さなくてはなりません。
 あなたが好きなことはなんですか?
 あなたとアメリカとの接点はなんですか?

スポーツが好きなら

 というわけで、以下、モデルコースを列挙します。
 あなたにとって魅力的なものがあるかどうか、よく考えてください。

 アメリカのスポーツは、いくつかのジャンルで世界のトップクラスです。
 特に四大プロスポーツは、好きな人にはたまりません。

 あなたが野球大好きなら、メジャーリーグの観戦はいかがでしょうか。
 本当に好きな人は、ケーブルテレビなどであちらの試合も見ていると思います。あちらの選手のことも詳しく知っていたりしますね。そういう方なら、野球観戦を中心とした日程を組むのも悪くないかと思います。

アメフトは、アメリカで最もメジャーなスポーツ

 しかし、アメリカ人が心から愛しているスポーツはというと、アメリカンフットボールです。全身筋肉のマッチョな男達がぶつかりあう……これこそまさにアメリカです。
 バスケットボールも盛んです。NBAのことは、詳しくない人でも耳にしたことがあるかと思います。
 四大スポーツ、最後の一つはアイスホッケーです。ただ、日本人にとっては、他のスポーツと比べて、馴染みが薄いことが多い気がしますが。

 スポーツが目的の人は、多くの場合、特定のチームや選手が目当てのことが多いので、具体的なプランを提案しにくいです。全米にプロスポーツチームが分散しているので、どこに行けばいいと言えないのです。
 これらについて、強い興味がある場合は、試合の日程を調べるところから始めることをお勧めします。

音楽好きなら、南部を中心に

 音楽が好きな人であれば、これもアメリカでは盛んです。
 しかも、さまざまなジャンルをカバーしているので、耳を休める暇がないほどです。

 音楽の愛好家というと、なかなか判断が難しいところなんですよね。
 周りにプロ、セミプロのミュージシャンが何人もいるので、あくまで個人的な体感に過ぎませんが、あえて言わせていただくと、主として聞き手の立場にいる人は、特定のジャンルにこだわる傾向があるような気がします。逆に演奏者のポジションにいる人は、どんなジャンルでも積極的に聴きにいって、半ば趣味、半ば勉強といったスタンスを持っていることが多いようです。プロは、自分とはまったく接点のない専門外の音楽でも、機会があれば必ず「聴きたい」と言いますね。

ジャズが好きならニューオーリンズへ

 まず、ジャズの聖地としてはニューオーリンズがありますが、そこからならブルース揺籃の地であり、ロックの聖地でもあるメンフィスもそう遠くはありません。鉄道でも繋がっています。更にメンフィスからなら、カントリーミュージックの本場であるナッシュビルまでグレイハウンドで4時間です。逆にそこからセントルイスを目指せば、こちらには全米で二番目に古いセントルイス交響楽団が存在します。

ナッシュビルでカントリーミュージックを

 音楽好きの人を連れて旅行に行くなら、これだけで一週間は退屈させずに済む気がしますね。

 成田→ニューオーリンズ (直行便で15時間程度)
 ニューオーリンズ→メンフィス (国内便もあるが、電車だと9時間かかる)
 メンフィス→ナッシュビル (長距離バスで4時間程度)
 ナッシュビル→セントルイス (国内便で一時間ちょっと)
 セントルイス→成田

雄大な自然を楽しむなら西側を

 アメリカの魅力は、その雄大な自然にもあります。
 グランドキャニオンはあまりに有名ですが、見所はそれだけではありません。

 イエローストーン国立公園は、アメリカで初めての、そして世界最初の国立公園です。それまで、美しい景勝地というのは、特に西欧世界では、一部の貴族や特権階級のものでした。それを一般国民みんなの共有財産と看做して保護し始めた、その最初の例が、これなのです。

あまりに有名なこの景観

 その近くにあるグランドティトン国立公園も、その景観の素晴らしさは言葉にもなりません。
 この二つの公園があるワイオミング州は、全土の人口が六十万人にも達しません。その広さは日本の67%にも達するので、人口密度は日本の1%以下! です。それだけ自然が残されていると言うことですね。

納屋の後ろに聳えるグランドティトン山

 そして、例によってこうした素晴らしい景観を持つ国立公園も、アメリカ国内に点在しています。それこそもう、嫌がらせのように散らばっています。よって、一度の滞在ですべてを効率的に見てまわるなど、できようもありません。
 ただ、よくよく見るとこれらの多くは、国土の西側に多いことがわかります。東海岸は早くから開拓が始まったのもあって、実はネイティブアメリカンの時代には多くが森林地帯だったのですが、国立公園として残されている場所は多くありません。

 どれだけ時間があるかによりますが、南はアリゾナ州から、北はモンタナ州まで、一気に北上or南下する旅がいいかと思います。
 特に間にあるユタ州には、5つも国立公園が乱立しており、どれも素晴らしい景観を誇っています。

説明不要、グランドキャニオン(アリゾナ州)

 成田→ラスベガス (直行便で13時間程度)
 (グランドキャニオン)
 (ザイオン国立公園)

 ザイオン国立公園は、カナブからもアクセス可能で、こちらからのが近いです。ザイオン国立公園内での宿泊は、一箇所しかないロッジに限られるので、ハイシーズンの予約は一年前から埋まっていたりします。なので、なんとか手配して予約を取るか、またラスベガスまで引き揚げるか、別の場所で宿泊するかを決める必要があります。

 ラスベガス→(いくつかの国立公園を経由しながら)→モアブ

 この道中、理想を言えばレンタカーで走り抜けるのがいいです。
 いくつも国立公園があるので道中にうまいことホテルを確保できれば毎日絶景を楽しめます。

アーチーズ国立公園(ユタ州)、最寄の街はモアブ

 モアブからは国内便を乗り継ぐことになるでしょう。
 日程がどれだけあるかによってここから帰国するか、更に北上するかを選ぶことになります。

 国立公園巡りは、このパターンだけではありません。別項を設けて、詳しく説明したいと思います。

取捨選択こそがアメリカ旅行のキモ

 あとはネイティブアメリカンの歴史に詳しい方、アメリカ建国の歴史を追いかけたい方などは、目的地をよくご存知でしょう。
 それと、アメリカ横断をしてみたいという方もいらっしゃると思います。鉄道でもいいですし、レンタカーでもいいですが、実際の旅行としては、長距離バスや国内便航空機を含めたこれらの交通手段を効率的に組み合わせたほうが、安価で自由な旅行を楽しめます。

 今、挙げたようなアメリカの魅力ですが、本当にあちこちに散らばっているというのがよくわかったかと思います。

 何を楽しむのを優先するのか。
 また、移動手段についても、レンタカーの利便性は交通事故の危険性と隣り合わせですし、飛行機による移動の自由度は、列車での旅で味わえる車窓の風景とバーターオフです。やはりここでも取捨選択なのです。

 上手に切り捨てることが、アメリカ旅行のコツなのかもしれません。

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