飛行機でも列車でも行けない場所へ
国内線、鉄道でも行けない場所にも滑り込んでいく。
それがグレイハウンド(長距離バス)です。

飛行機ほど高速でもなく、列車ほど快適でもない移動手段ですが、網羅する範囲がより密でもあり、なんといってもお手軽で、安価というのがいいところです。
また、WIFIも完備しており、電源も利用できます。冷房が効きすぎるのが難点なので、特に夏場は上着の準備があったほうがいいでしょう。
こちらが路線図です。
ただ、完璧なものではないようです。
乗車券はウェブサイトからオンラインで購入可能です。
アメリカ現地でも、バスターミナルやバスディーポで購入できます。大都市圏のバスターミナルなら24時間営業もしているようですが、中小規模の田舎町では、早々に店を閉じてしまうこともあるので、営業時間を確認するか、日中にやるべきことを済ませておくことにしましょう。
出発地と目的地を結ぶ便があるかどうかは、実際にサイトで検索してみるとわかります。金額、かかる時間、出発する時刻などが表示されます。
バスに乗るには
実際に乗車する際には、まずはバスの看板を探します。目立つように [BUS]と書いた看板があったり、[greyhound] の看板があったりします。遅くても出発一時間前には到着しておいたほうがいいです。

チケットを購入していなければ、窓口で買います。事前にウェブサイトで購入した場合は、予約番号を伝えなければいけません。
ウェブ予約した場合は、コンビニなどでもらった領収書を捨ててはいけません。そこに書き込まれた予約番号がないと、まずバスに乗れません。
アメリカは明文化されたルールの世界であって、情実では人は動きません。というか、予約番号がない客を乗せるのは、一見すると親切ですが、身元不明の人物を乗車させるようなものです。もしその人がテロリストでバスジャックでも起こしたら?
だから、手続きに穴を開けないよう注意すべきです。
チケットを発券してもらったら、大きな荷物は預けましょう。車内に持ち込める荷物は一つ目は無料、二つ目は15ドルです。重さは11キロ程度までです。
それ以上の荷物は、預ける必要があります。22.5キロ以下で、直方体とみなした場合の3辺の長さの合計が 157センチ以下であることが条件です。一つ目は無料ですが、二つ目以降は、購入した席次第で条件が変わってきます。窓口で尋ねましょう。
預けた荷物がある場合は、タグがつきます。この時、半券を絶対になくさないように注意です。持ち主であることを証明できない荷物は、受け渡してもらえないからです。
そこまでやったら、あとは待つだけです。
待合室には自動販売機などがあるので、移動中に飲食したければ必要なものを買いましょう。車内での飲食は可能です。但し、公共の場所なので、喫煙はできません。
人が並びだしたら、目的地を確認の上、並んで乗車します。
この時、あんまりグズグズしていると危険です。というのも、グレイハウンドは、乗車可能な人数以上にチケットを売ってしまう場合があるからです! 満席になった場合、次のバスに回されてしまいます。1日1便しかない場合は、平気で翌日にまわしてきます。
乗る時にチケットをもぎるので、例によって半券は降りるまで持っておきましょう。
また、グレイハウンドは、乗客が集まりきっていなくても、時間になったら出発してしまいます。途中で休憩を挟んで停車することもありますが、これも警告なしにいきなり出発することがあるので、車外に出ても油断してはなりません。荷物を置いたまま外に出たら、荷物ごと持っていかれて、にっちもさっちもいかなくなります!
……というように、グレイハウンドを使った旅行は、割とシビアです。
ボヤボヤしていると置いていかれてしまうし、ルールからこぼれ落ちても救済してもらえません。しかし、国内線も鉄道も通っていない場所に、他人の運転によって運んでもらおうと思ったら、これ以外の選択肢がないのです。
グレイハウンド利用についての諸注意
一応、他にも注意すべきことが少々残っています。
まず、同じ目的地に行く場合でも、エクスプレス便と経由便の違いがあります。目的地に直行する場合は列車に負けないほどの速度がありますが、あちこち経由する場合は、必然的に速度が落ちます。それがバスの小回りのよさでもあるので、一概に悪いことでもありません。
また、運行ルートは、例によって大都市圏ほど手厚いです。フランシスコとロスアンゼルスを行き来するなら、満席になって次にまわされても、しばらく待てばまた乗れます。ですが、地方になると1日1便が普通にあるので、旅程に致命的な影響を与えることになります。
取り残されないためには、これも余裕を持ってバスターミナルに行くということしかありません。早めにいって手続きして、チケットを発券してもらい、これまた早めに列に並ぶことです。

それから、グレイハウンドは安価ですが、それだけに観光客が主要な客層ではありません。普通のアメリカ人の足にもなっているのです。そしてその人達は、決して裕福な層ではありません。恵まれた人達であれば、可能ならですがもっと快適な移動方法を選ぶだろうからです。
つまり、車内の安全は自分で確保するしかない、ということです。
ネット上で少し検索すれば、グレイハウンドの車内の写真も見つかると思います。
黒い座席……そのカバーの部分にはひび割れが入って、裂けかけていたりします。正直、「地球の歩き方」でグレイハウンド推しなのがなぜなのか、私にはサッパリわかりません。「俺、バックパッカーしてるぜ」感というやつでしょうか? 20~30年前のセンスだと思います。
とはいえ、特に辺鄙な地域では、その網羅性は捨てがたいものがあります。
状況に応じて使いこなすのがいいでしょう。