地域の気候の違いを理解する
アメリカは広大な国です。だから旅行しようとする時、まず最初に問題になるのが、移動手段でした。
しかし、それと同じくらい、無視できない問題があるのです。それは……
気候の違いです。
北部のモンタナ州、そのすぐ南の内陸のワイオミング州の気候と、国土の南東を占めるフロリダ、その南端のマイアミでは、暑さ寒さ、湿度が全然違います。
例えば、国立公園巡りをしようと決めて、こんな旅程を組んだとします。
1.サンフランシスコから入国
2.ヨセミテ国立公園を見物
3.ラスベガスに移動
4.グランドキャニオンを見物
5.ボーズマンに移動
6.グランドティトン、イエローストーン国立公園を見物
何の準備もせずに、こんな計画を実行したら、体力がない人ならすぐに風邪を引いてしまうでしょう。
まず、サンフランシスコを含む西海岸南部は、基本的には温暖な気候です。しかし、天気次第では、サンフランシスコは夏でも急に冷え込むことがあります。
対照的にラスベガスは、日本人がイメージする典型的な西部です。夏場には太陽が照りつけ、気温は40℃を超えることもあります。日焼け止めも必須ですが、サングラスなしでは車の運転すらままならないでしょう。
ところがいきなり北北東、カナダに近いモンタナ州や、ワイオミング州はとなると、急に気温が下がります。真夏であれば、最高気温は30℃くらいあるのですが、夏場でも夜間になると、ロッキー山脈の内側の内陸部ですから、15℃前後まで一気に冷え込みます。
それぞれの地域の特性を知って、適切に対策を用意することの重要性が、おわかりいただけましたでしょうか?
では、各地の気候を見ていきましょう。
西海岸は温暖で過ごしやすい
まずは日本人観光客にとっては出入り口になりやすい、ロスアンゼルスから。

西海岸の南側ということで、かなり気候的には快適です。
冬場に訪れても、気温が氷点下を下回ることはほとんどなく、夏場でも30℃を超える日は珍しいくらいです。
但し、気をつけるべきは空気の乾燥。このおかげで寒暖差が激しくなりがちです。屋外で活動するなら、水分補給のアテがないと不安です。
観光に向く時期としては、春の終わりから秋の半ばにかけてでしょう。雨が若干増えますし、湿度も上がります。ただ、冬場でも日本の東京よりはずっと暖かく、過ごしやすいはずです。
西海岸の北側になると、また少し感じが変わってきます。あとちょっとでカナダに入りそうなシアトルは、というと……

ロスアンゼルスも冬場は曇りがちなのですが、まだ晴れの日のほうが多いのです。しかし、シアトルの冬は、ほとんど曇りになります。
緯度が高い割に、気温の変化は小さいです。やはり海が近いということで、平均気温は安定しています。氷点下を下回る日は、冬場にはありますが、それでも稀なほうです。かといって夏場も、30℃を上回る日は僅かしかありません。一日の寒暖差は乾燥のせいもあって大きく、10℃以上変動します。
よって観光に適した時期は、もう夏場だけです。晩秋からはまとまった雨、または雪が降るようになるからです。
このように、西海岸を旅する場合には、いくつか共通した問題点があるとわかります。
- 空気は乾燥している
- 一日の温度差は大きい
- 年間を通しての温度差は小さい
- 冬場は曇りがちで、夏場の方が晴れる
つまり、春から秋の明るい季節に訪問し、朝晩の冷え込みに対処する準備を整えておくべき、ということができるでしょう。
西部の内陸は灼熱の砂漠
これが内陸のラスベガスに入ると、まさに西部、砂漠の気候を呈するようになります。

乾ききった砂漠で、しかも海の恩恵もないので、冬場になると一気に気温が低下します。氷点下を下回ることは滅多にないとはいえ、東京の冬場と変わらないくらい冷え込むこともあります。
逆に夏場はとなると、これはもう、灼熱地獄です。七月の一番暑い時期には、最高気温は40℃を超えます。夜になっても熱帯夜です。ただ、湿度はないので、夜間は日本の夏よりずっと過ごしやすいでしょう。とはいえ、気温差も大きいので、油断大敵です。
ぶっちゃけ、ラスベガスで過ごす最適な時期なんてありません。正直、お金のある人が高級ホテルに泊まりつつ、プール遊びするのがちょうどいい場所ではないかと思います。ただ、それでも春と秋の一時期であれば、比較的過ごしやすいでしょう。
このロッキー山脈の西側の内陸部を旅する場合には、次のような問題点があります。
- 空気は乾燥している
- 一日の温度差は大きい
- 年間を通しての温度差も大きい
- 暑いし日差しが強い
グランドキャニオン観光など、屋外で活動するつもりなら、春と秋の快適な時期をピンポイントで狙っていくのがよく、かつ一日の気温差の変動に備えた衣類を準備しておくべきです。また、強い日差しに備えて、日焼け止めやサングラスを用意しておくのも有効です。

グレートプレーンズは冷涼な気候
では、ロッキー山脈をまたいで東側に出てみると、どうなるでしょうか。

イエローストーン公園にほど近い、ワイオミング州北部のパウエルでは、やはりというか、一日の気温差が15℃近くもあります。夏は短く、7~8月の期間にちょっと暑くなりますが、それで終わりです。逆に冬場は凄まじく、一日のほとんどの時間が氷点下を下回る日が続くことになります。だいたいマイナス10℃近くまで下がります。
不思議なことに、ワイオミング州の南東端にある州都シャイアンでも、この傾向はほとんど変わりません。
五月頃に降水量のピークがありますが、そもそもこの地域は雨が少なく、やはり乾燥しています。但し、ラスベガスのような灼熱の地ではなく、冷涼な「大平原」です。
- 空気は乾燥している
- 一日の温度差は大きい
- 年間を通しての温度差も大きい
- 寒い
イエローストーン国立公園や、グランドティトン国立公園など、ワイオミング州の経済の一つの柱が観光ですが、こうしたところを見物に行くのなら、とにかく寒暖差には注意が必要です。夏場でも、夜間は15℃くらいまで冷え込みますので、油断していると風邪を引きます。

大陸の東西で異なる傾向
面白いことに、列車の路線図をみると、西部は横に輪切りにされていて、東部はどちらかというと縦に仕切られている感じに見えるのですが、気候はこれとまったく逆です。
国土の西側は南北の差もありながら、どちらかというと東西で気候の違いが大きいのに、アメリカの東側は、南北方向で気候の違いが強く出ます。とはいえ、やはり海沿いのほうが気温が落ち着く傾向はあります。

五大湖周辺はもっとも寒冷で過ごしにくい
五大湖の西側、ミネアポリスあたりは、全米でも最も寒さの厳しい地域です。

内陸に位置するために朝晩の寒暖差は、やはり10℃くらいはあります。しかも海に挟まれていないため、夏と冬の温度差も大きいのです。乾燥の度合いは大平原よりマシですが、寒さはずっと厳しいです。なんと、真冬の時期には、最高気温が氷点下を下回るほどなのです。また夏場も、気温が30℃を滅多に超えないながらも湿度があるために蒸し暑く、過ごしやすいとはいえません。
この傾向は、実はずっと東のニューヨークに至るまで、かなり似通っています。夏は暑く、冬は寒いのが五大湖周辺のアメリカ北東部の特徴です。
- 空気はやや湿気があり、東に向かうほど湿度が上がる
- 一日の温度差は大きい
- 年間を通しての温度差も大きいが、東に向かうほど差が縮まる
- 夏暑く、冬寒い
訪問に適した時期は、北部であれば夏ですが、ニューヨークくらい緯度が下がってくると、春と秋が最適でしょう。
日本に近い南部の気候
これが南部方面になると、一気に湿度も温度も上がってきます。
イメージとしては、日本の気候に一番近いのが、この地域です。

一例としてメンフィスを挙げると、ほぼもう日本の東京そのまんまです。夏は30℃を超えてかなり蒸し暑くなり、冬は氷点下ギリギリまで気温が下がります。
南部については、日本の気候をイメージすればだいたい当てはまるので、これ以上の説明は不要でしょう。夏場にはハリケーンが、日本の台風の如くに襲ってくるのも、似通っています。
では、もっと南、フロリダの南端マイアミまで行くと、どうなるでしょうか?

もはや常夏です。
一応、冬はありますが、冬といっても春みたいな気候です。秋から春の初めにかけてが一番過ごしやすく、それ以外の時期は、ひたすら蒸し暑いだけです。海水浴やプール遊びをするつもりだとしても、ゴールデンウィーク明けからしばらくの間まででしょう。というのも、6~9月までは温度も高いですが、雨も多いのです。また、ハリケーンが繰り返し襲ってくる地域でもあるので、注意が必要です。
日本の気候と比べるなら、沖縄が一番近いかもしれません。
こうした気候を考慮に入れて、旅行計画をたてないと、暑すぎたり寒すぎたりで、体力を消耗することになります。
アメリカの広さをしっかり意識して、必要な準備を整えていきたいところですね。