アメリカ西海岸北部の観光まとめ

アメリカ合衆国
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夏のトレッキングに

 西海岸北部を代表する都市といえばシアトルですが、もう一つ、オレゴン州の州都はポートランドといいます。ずっと東のメイン州の州都も同じ名前なので、本当にややこしいですね。

 この地域の旅行は、大都市としての見所より、近隣にある公園を見てまわるほうがメインになってくるかと思われます。
 ただそうなると、どうやってどこを見てまわるかを選択する必要が出てきます。

 効率的に見てまわれば、西海岸北部だけの旅行であれば、一週間は要しないと思います。多少、余裕を持たせてたっぷり観光するのであれば、やっと一週間でしょうか。
 東に進めば、モンタナ州とワイオミング州、そして大平原が広がっています。別の地域の国立公園を見物することまで視野に入れてもいいかもしれません。

 旅行に適した時期は、になります。列車でロスアンゼルスから一気に北上することはできますが、気温差がそこそこあるので、そうした旅行を企てるべきかどうか、よく考えてみてください。

 なお、アメリカの観光地を網羅したリストはこちらです。

シアトルの観光

 まず、シアトルの市街地の観光から。
 といっても、観光資源がないわけではないですが、実はそこまで劇的なものはないようです。観光客がまず訪れるのは、パイク・プレイス・マーケットですが、

パイク・プレイス・マーケット

 なんというか、市場はなるほど、観光客を楽しませる力を持った場所ではあります。ただ、それだけに突出した魅力があるかといえばそうでもなく……
 スターバックスの1号店がありますよ、と言われても、それは日本でも見慣れたスタバでしかないという厳然たる事実が聳え立っているのです。
 一応、ガムウォールやパイク・プレイス・フィッシュのパフォーマンスなどはありますが、それくらいでしょうか。

シアトル・グレート・ホイール……という名前の観覧車

 そこから南東方向に向かって進み、エリオット湾を右手に進むと、各種ツアーに参加できる場所があります。
 1時間かけてエリオット湾内を見学するハーバークルーズ。アゴシークルーズの船に乗ってブレイク島に渡ることもできます。そこには先住民の文化の保存のために作られたティリカム・ビレッジがあります。

 調べたところ、チヌーク族の文化を保存しているところのようです。
 アメリカの北西部というのは、ネイティブ・アメリカンへの征服活動でも、一番最後になった場所でした。アメリカとロシアの間に挟まれて、押し潰されてしまったのです。

 何も知らない私達からすると「インディアン」というのは、どれもこれも同じようなものだと思ってしまいがちなのですが、北西部のハイダトリンギットチヌークといった各民族は、堅固な建造物と移動しない大規模な共同体を構築して、海産物に依存して生活していたという点で、特異です。
 また、戦争の様式も独特でした。アメリカ先住民にありがちな奇襲ではなく、相手に日時を告げた上で海上を移動して、敵対村落の付近で会合を持ち、決裂した場合に改めて戦闘を始めました。こうした戦争は様式化されていて、移動に使ったカヌーを防壁に使う他、重装備の防具もあって、死傷者が出ることは稀でした。

 あとは、見栄えのするポイントとしては、チフーリ・ガーデン・アンド・グラスなんてどうでしょうか。
 文字通り、ガラスのアートでいっぱいの空間が待っています。

ポップカルチャー博物館

 その他には、いくつかの博物館、美術館が存在します。
 ジミ・ヘンドリクスの出身地ということで、ポップカルチャー博物館があります。シアトル美術館には、日本人にとっても馴染み深い物があります。葛飾北斎の富岳三十六景などの芸術作品があるので、時間があれば立ち寄りたいところです。

幕末から明治にかけて、日本でもこういった文化遺産がいくつも海外に流出した

 この通り、シアトルも退屈な街ではないのですが、尖った印象はありません。
 実のところ、シアトルに日本人が大勢訪れていたとすれば、そのきっかけとなったのは、イチロー選手だったと思います。彼がマリナーズに所属して活躍することで、それを目にしたいと思った大勢の日本人が、本拠地であるシアトルに詰め掛けるようになったのです。ですが、彼が引退した今、今後のシアトルにどれだけ日本人客が来るかは、私にも想像がつきません。

 私としては、シアトルはむしろ、この近辺に点在する素晴らしい国立公園へのゲートウェイだと思っています。

ポートランド(オレゴン州)について

 ポートランドについても説明しておきます。
 見所が多い場所というわけではないのですが、ここからでも列車でグレイシャー国立公園にアクセスできる他、セントへレンズ国立火山記念公園からはシアトルよりこちらのほうが近いというのもあります。また、バスのルートでは、ここからオレゴン州を突っ切ってアイダホ州都のボイジーに至り、更にソルトレークまで進むこともできます。
 旅程を組む上では、うまく嵌めこむことのできる場所です。

 この街でまず見るべきは、少し郊外になりますが、ワシントンパークです。
 ワシントンDCでもなければ、すぐ北のシアトルを含むワシントン州でもないのに(オレゴン州)、なぜかワシントンパーク。そこそこの広さもあり、バラ園や動物園、日本庭園などが見所となっています。また、付近にはピトック邸もあり、こちらも観光ポイントです。
 また、春から冬にかけて、土日の昼に、バーンサイド橋付近でサタデーマーケット(青空市場)が開かれます。

蘭蘇園

 時間があれば、ポートランド美術館を巡って、現代画家の作品からネイティブ・アメリカンの装飾品まで、いろいろ眺めてみるのも楽しそうです。
 あとは蘭蘇園にも立ち寄ってみたいところです。姉妹都市の蘇州の庭園様式を模した庭です。

4つの国立公園

 しかし、西海岸北部の魅力は、これら都市部というより、むしろ「公園にあり」といえます。

 マウントレーニア国立公園……

マウントレーニア国立公園

 セントへレンズ国立火山記念公園……

セントヘレンズ国立火山記念公園

 オリンピック国立公園……

オリンピック国立公園

 ノースカスケード国立公園……

ノースカスケード国立公園

 これらに立ち寄る際に、上記二つの街が機能する、と考えたほうがよさそうです。

 中でも最もメジャーな国立公園はマウントレーニアですが、この付近にはセントへレンズ国立火山記念公園があります。二つあわせて、ポートランドに南下する方向で見て歩くのがいいでしょう。日程次第ですが、丸一日かけて見てまわってから、ホテルはポートランド側に取る感じです。
 そこから更にグレイシャー国立公園を目指したり、南下してイエローストーン国立公園、グランドティトン国立公園を目指すなら、ポートランドから普通に列車の旅ができます
 また、そこまでせずにシアトルから日本に帰る場合には、現地でガイドを連れてトレッキングを楽しむというのもいいでしょう。10時間以上のツアーですが、その価値はあると思います。ただ、晴れた日に行けるようにしたいですね。あとは標高が高いので、体力がそれなりに要求されます。

 オリンピック国立公園は、氷河温帯樹林、そして海岸線とが共存する、標高差のある稀有な環境です。
 まずは氷河を見なくては始まりません。ハリケーン・リッジは観光客が行きやすい場所として知られていますが、7月後半から8月前半にかけて訪れれば、美しい高山植物の群生に目を奪われることでしょう。
 オリンピック半島の西側に行けば、山脈によって水分が冷やされ氷河になる前の、湿った空気と温かな環境があります。また、自然海岸線も必見です。

 しかし、その広さゆえに、じっくり見物するには宿泊を要します。また、当然ながら公園内に車で乗り入れるわけにはいかないので、グルッと周囲を回っては、見たいポイントに滑り込む、ということをしなければなりません。よって、レンタカーも必須です。
 本腰を入れて観光する人でないと、なかなか難しい場所ではありますね。

 ノースカスケード国立公園も、やはり自動車が欲しいところです。かなりの距離があります。
 アメリカらしいと言うか、観光客を迎えるための集落がいくつかあって、それが西部風だったり、ドイツ風だったり……こうやって作っちゃうところがアメリカなんですが。
 美しい滝と、ターコイズブルーの湖は、ここの目玉です。

こういう感じ

「シアトル」の由来

 最後にこぼれ話を。

 この地域の中心都市は「シアトル」です。
 ドゥワミッシュ族の酋長だったシアルスが訛ってシアトルになったのです。シアトルのパイオニアスクエア・パークには、シアトルの胸像があります。
 で、手元にある「地球の歩き方」には「入植者たちは酋長の和平への努力に感謝し、町名に彼の名前『シアトル』を残したのだ」と書いてあるのですが……

酋長シアルス

 まぁ、それだけ和平に努力した人でもあったらしいのですが。
 とにかく支配と所有を求めた白人に対し、彼はあくまで謙虚で、かつ高潔でした。
 俺達の土地を奪うな、と言ったのではありません。人が大地を所有するのではなく、大地の上に人が置かれているに過ぎないからです。

 ですが、シアトル自身は、自分の名前を残して欲しくなかったそうです。どこかで読んだ記憶があります。
 死んだ人の名前を呼ぶのはよいことではないという考え方があったらしく。でも、勝手に人々はこの場所をシアトルと……胸像まで作って……

 ままならないものです。
 なんにせよ、私達観光客も、他の呼び名がないので「シアトル」と呼ぶしかないのです。

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